「ヒトラーの贋札」観ました

alt-native2008-08-04

かぎりなくノンフィクション映画です。
同じお国だけあって「善き人のためのソナタ」とテイストが似ています。

物語は1936年に主人公のユダヤ人「にんべん師」ブルガーが当局に逮捕されるところから始まります。
ユダヤ人に対する容赦ない迫害が全編を通して描かれます。
しかし、ひょんなことから他のユダヤ人技術者たちと共にナチスのポンド/ドル紙幣偽造作戦に参加させられます。
同じ収容所内で同胞が毎日殺されていくのを音で聞きつつ、
簡素ながらシーツのかかったベッドで眠る主人公の葛藤が一つのポイントになります。
もちろんユダヤ人に人権などありませんから、作戦を成功させなければ殺されます。
しかし、政治的信念からサボタージュする同胞や自分を取り込もうとするドイツ人将校などに悩まされつつ
彼はプロフェッショナルとして仕事を全うしていくところがとても格好いいです。

荒んだ時代をリアルに描写すると、
視聴する側にも心の負担を強いる映画になる傾向があるように感じます。
これは率直な意見ですが、悪い意味で言っているのではありません。
社会や政治を描写するには徹底したリアリズムが必要だと思います。評論家気取りですが。
逆に時代をボカして描こうとすれば「パール・ハーバー」のような駄作が生まれることになります。
かわぐちかいじ氏も「沈黙の艦隊」の背表紙で「リアリティ」の重要性を説いています。
小説や映画、そして漫画さえ「リアリティ」を持てば人間の心を捉えるようになるというところは賛成です。
「重い映画」がいい映画だとは言いませんが、
テーマや描写がシビアでも見終わった後「スッキリ」する映画、あるいは大きな問いを投げかける映画は「いい映画」だと言えると思います。
この映画もそんな映画の一つです。

余談ですが、製作したのは「ヒトラー~最期の12日間~」のマグノリア社だそうです。
ヒトラー~」は音楽なしで描写したリアリティ追及に徹した名画ですが、
「贋札」では随所でレコードから流れる音楽が和ませてくれます。
音楽もポイントの一つでしょうか。