P2P概論 -ネットワーク形態としてのP2P-

日記を書いていると、筆が弱いのか、どうも断言口調になってしまうことに悩んでいます。がんばりまーす。
前回はP2Pを大きな括りで「技術」と「概念」と大別して「概念としてのP2P」を解説しました。しかし、私は社会学者じゃないので「概念としてのP2P」とかエラそうに言いながら深い分析ができませんでした。まぁ過去は気にせず、以降は技術者の端くれらしく「技術としてのP2P」を解説していきたいと思います。
悪名を馳せたWinnyは、正確に言うと「P2Pネットワークでファイル共有/交換を行うソフトウェア」です。問題は著作権というコンテンツの属性を無視してファイルを共有しようとした点にあります。どっかのWEBサーバーに格納しておいたものを配布しても、著作権法違反になるのは同じであってP2Pネットワークを使用したかは問題にはなりません。裏を返せば著作権保護機能(DRM)をサポートしていれば、P2Pネットワークでファイルを配信すれば問題はありません。その証拠にP2Pネットワークを介してコンテンツを配信する仕組みが増えています。宣伝をするわけではありませんが、国営放送だって採用しています。
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/event/2008/05/22/19650.html
ではなぜ他の著作権違反に比してWinnyが大問題になったのか。それは一言で言うと"タチが悪い"からです。
勝手に着信音を配信するサイトは、サーバーを停止すれば配信は止まり違法コンテンツの絶対量は増えません。著作権当局の処置はそれで完了します(対症療法ですが)。それに対してP2Pネットワークはサーバーがなく、ネットワークに参加しているノード(端末=PC)全員がサーバーでありクライアントなので、どっかのPCを停止してもコンテンツの増殖は止まりません。こうなると総務省の打てる手立ては限られてきます。ファイル共有ソフトの使用に厳罰を科すとか、ネットワーク参加ノード全員のPCを停止させるとか難しいですよね。ネットワーク参加者全員が共犯なので責任も明確になりません。現在でもWinnyノードは全国で30万個くらいあるらしいので、その量からして罪は重いと言わざるをえません。だから代わりにソフト作成者に刑事罰が下されたのでしょう(これは失言)。
上述のとおりP2Pネットワークは一般的な「サーバー/クライアント(C/S)モデル」とは異なり、個人のPCがサーバーでもありクライアントでもあります。だからC/Sモデルのようにツリー構造である必要はありません。なので、「ツリー型」、「スター型」、「メッシュ型」のいずれでもありうるのです。ただ"Peer to Peer"の特性を生かそうすれば、1つのノードはなるべく多くのノードと接続すると効率的なので「メッシュ型」であることが多いようです。
またもう一つC/Sモデルと違う点は「マルチホップ」という概念です。C/Sモデルではコンテンツを配信するときサーバーは直接クライアントと接続されているため、サーバーはクライアントPCにデータを送ればよかったのです。当たり前のことのようですが、メッシュネットワーク上ではコンテンツを持っているノード(P2Pでは"サーバー"はありません)がコンテンツを要求しているノード("クライアント"とも呼びません)に直接接続されているとは限らないので、「バケツリレー」の必要があるのです。このバケツリレーがマルチホップという機能です。リレーが1回なら「シングルホップ」になりますが。
以上のように、ノード、メッシュネットワーク、マルチホップの概念がP2Pネットワークのポイントです。
実際にP2Pを使用して著作権法に抵触しないコンテンツ配信(CDN)ビジネスが立ち上がっていますが、それはまたの機会に。