捕鯨問題について考える(2)

前回(http://d.hatena.ne.jp/alt-native/20080530/1212166795)に続いて!
では現在の捕鯨反対運動の根拠は何なのでしょうか?
グリーンピース捕鯨に関する知識を知ってもらうために配布している「クジラと捕鯨」(http://www.whalelove.org/raw/content/fun/10-2.pdf)によれば、クジラの需要の少なさと漁獲量がバランスしていないことや、保護区の鯨を「調査」と称して捕獲するのは違法行為であること、税金を投じた南極捕鯨の目的が不明確であることなどを批判の材料としています。確かにそれらは的を得た批判です。
しかし、気になる点も。漁獲量の推移は詳細な数値まで書かれているのに鯨の生息数の調査が載っていないことです。IWCでは定期的に生息数の調査を公表していると聞いています。漁獲量の減少が生息数の減少を意味しないのは当然ですが、具体的な数字を載せないということは「本当に鯨は減ってるの?」って思われても仕方ないですよね。根拠としての「個体数の減少」を認めることはできませんでした。
また"(クジラ以外の魚の)乱獲のせいで一部の種類の魚が減少して世界の海洋生態系を乱している"ことと"生態系の頂点にいるクジラ"を結びつけようとしている節があります。"捕鯨が生態系を破壊している"と明確に記述しないのはやはり科学的根拠がないからでしょうか。残念ですが、私には"生態系の頂点にいるクジラ"を保護する根拠は認められませんでした。
というわけで一番ほしい情報が載っていない冊子という印象を受けました。冊子の最後に「グリーンピースは海洋生態系の頂点に位置するクジラ類の個体群に悪影響を与える人為的な行為を問題視」すると述べられています。確かに高尚な考えだと思いますが、私が危惧するのは「クジラは頭のいい生き物だから殺してはいけない」とかいうヒステリックな考え方が正義になることです。
私が池田氏のブログ(http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/b889ea2c7fa9dbc452c9c06a9720c5e5)に注目した点の一つが、彼が"捕鯨は非人道的である"との議論のナンセンスさを批判して「菜食主義者でさえ無罪ではない」と述べたことです。これには同感です。人間は他の生き物を殺した上でそれを食して生きているのに、そのありがたみを忘れて「食べていい」「食べちゃいけない」というのは道理に反しているのは明らかだと思うからです。しかし、それとは別に「非人道的だからクジラを殺すな」という意見に危険を感じます。それは人種差別や環境破壊につながりかねないからです。「牛や豚は人間が管理している生き物だから問題ない」「クジラは野生の生き物だから駄目」という考え方がおかしいのはお分かり頂けると思いますが、それが生き物の優劣を意味するようになったり、それが人間にでも向けられることがあればと想像が飛躍してしまいます。でも実社会でも世界で貧富の格差が拡大していて、生まれながらにして人間に優劣がつく時代がすぐそこまで来ています。
ちなみに池田氏はブログで、「盗んだものを証拠にして告発をする」ことは刑事訴訟法の規定で告発できないと指摘しています。それに対してグリーンピースはホームページで、「盗む"意思"がなかったのだから"窃盗"にはあたらず刑事責任は問われないと」(かなり要約)のコメントを発表していますが、まぁ法的にはどうあれ彼らの訴えが社会的な重みを持たなくなってしまった感はあります。
(http://www.greenpeace.or.jp/press/reports/rd20080520oc_html)