エコドライブ論 -「クルマ王国」崩壊?-

こんな記事を見かけました。ちょっとアメリカのことを考えてみます。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0805/31/news007.html
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20080519/157326/
私の抱くアメリカのイメージは"道が広くてビュンビュン飛ばしているのが普通"でしたがそうでもないようです。05/31号の週刊ダイヤモンド早大野口悠紀雄教授が"アメリカ的生活様式"の問題点について指摘したのを思い出しました。
アメリカの内需を生み出す原動力は住宅と自動車です。野口先生曰く、アメリカのガソリン税は日本の3分の1程度で住宅ローンに対する減税額が日本の10倍にもなるとか。しかもそういう優遇税制を古くから行ってきたのです(羨)。
高校のときに習った"American Way fo Life"(だっけ?)といえば、「郊外に大きな敷地と自宅を持って都市のオフィスに通勤する」と記憶しています。そんな社会構造を作り上げたのはそんな政策が背景にあったせいなんですね。でもその反面、自動車や住宅を持てない低所得者は都市に集中し、オフィスビルとスラムが混在していると習いました。当時はあまり実感がなかったのですが、現在の日本でもそれが再現されています。残念ながら。
また、アメリカの東海岸北部は巨大な都市が切れ目なく広がっています。古めかしく言うとメトロポリタン。日本で言えば関東の京浜工業地帯、愛知の中京工業地帯のような地域のイメージでしょうか。
人口が増加し産業が栄えるのはいいのですが、野口教授が指摘したのはその拡大が"スプロール化"である点です。都市が形成されるときには本来「土地利用の合理性や周囲の道路との接続」(http://ja.wikipedia.org/wiki「スプロール」)を考慮して道路を引くのが望ましいのですが、アメリカはそれをやらずに都市が拡大してしまったため、道幅はあるけど非合理的な道路網ができてしまったようです。結果として交通網のボトルネックに慢性的な渋滞が発生してしまうわけです。これを改善するのは至難の業。
現在、アメリカは住宅供給を過剰にする政策の失敗に直面しています。その余波でしょうか。ガソリン価格の上昇にも悩まされています。野口教授は「ガソリンがぶ飲み構造」が変化しないから原油需要が収まらないのだと指摘し、「自動車利用をどう抑えるか」が最大の課題であるとしています。具体的には交通インフラの中心を「鉄道網に切り替える」ことが最大のブレークスルーであると言っているのですが、でも想像してください。あの国で「電車を走らせましょう」なんて主張する議員候補や大統領候補が当選できるでしょうか?京都議定書だって批准しなかったんです。疑問ですよね。野口教授は「出来上がってきた社会経済構造=自動車依存体質」と「自動車優遇政策」のどちらも変革が難しいとしながら、その答えを政策転換に求めています。
個人的な見解ですが、この矛盾をブレークスルーするのはやはり技術的なイノベーションではないでしょうか。アメリカ国民がガソリン価格で危機に直面したときこそアメリカの大排気量至上主義を真に改めるチャンスでしょう。残念ながら世界的に見ても実用に耐える"真のハイブリッド車"はまだプリウスのみです。欧米の自動車市場は日本と違ってエタノールディーゼルのような燃料のエンジンの普及動向も絡むので一概には言えませんが、願わくばビッグスリープリウスに対抗できる20マイル/L程度のガソリンハイブリッド車を市販できればアメリカのガソリン安売り政策を改めることができるかもしれません。実際にGMはその開発に着手しているようです。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20080523/158704/
はてさてフェニックスとなるかリバイアサンとなるか。