本当なら大事件

[WiredVision]マツダ、2015年までに燃費30%向上する計画を発表
http://wiredvision.jp/blog/autopia/200806/20080625013625.html
[マツダ]マツダ、CO2排出量削減に向けた取り組みについて
http://www.mazda.co.jp/corporate/publicity/release/2008/200806/080623.html
マツダは2015年までに燃費を30%向上させる計画を発表しました。その中でレシプロエンジンではスマートアイドルストップシステムなるものを導入することで日本市場で7-8%の燃費向上を実現するとしています。新技術「スマートアイドルストップシステム」は「停止中のエンジンのシリンダー内に直接燃料を噴射して爆発させ、ピストンを押し下げて始動させる」仕組みです。
最初聞いたとき「眉つばでは?」と思ってしまいました。もしマツダの説明どおり燃焼のみでピストンの始動が可能ならば自動車の歴史が変わります。
レシプロに限らず、エンジンはまずクランクシャフトを回転させて、その回転に合わせて燃料を噴射、着火してエンジンを始動しています。以前のエントリーでも書きましたが、自動車のバッテリが一番消費されるのはエンジン始動時です。クランクシャフトはそれ自体の重さやシリンダーの摩擦抵抗があるため容易には回らないからです。想像になりますが、たかが4本か6本しかないシリンダーの燃焼1回だけでエンジンを起動するには燃料噴射装置に強力な圧縮力が求められるだろうし、始動時にはシリンダー内の圧力が急激に上がるためシリンダーブロックの強度が求められます。シリンダー内のピストンの位置もモニタリングして噴射量を調整する必要があるかもしれません。とにかくいろいろなことを克服する必要があります。
自動車の歴史は100年を超えますが、これまで誰も克服できなかったのは技術的に困難だったからでしょう。もっともこの課題はいつか克服されるべきものとして捉えられて、どのメーカーも研究実績はあるはずなので今さら実用化されたとしても驚くものではないかもしれません。しかし、この要素技術は日本の自動車性能を左右する画期的な発明であると言えると思います。
期待される効果は停止時のエンジンストップにとどまりません。まず始動に必要なセルモーターと周辺電装部品が不要になり価格は数〜10万円程度下がります。バッテリも要求される電圧が減るので小型化し、寿命も延びると思われます。もっともエアコンがあるので劇的に小さくなるかは疑問ですが。走行中に発電してバッテリに充電する必要がなくなるので、エンジン回転数平均が下がります。運転頻度が多く、1回の走行時間が短い条件の自動車には燃費向上が期待できます。セルモーター自体はそんなに大きいものではありませんが確実に車体が軽量化します。
すでに似た技術は開発されていますが、燃料の噴射量をデリケートにコントロールできるとなれば、走行時に「巡航時は少量」「加速/高負荷時は増量」というふうに燃料を最適化できる可能性もあります。将来の技術的発展を期待させる技術でもあります。
マツダがどこまでシミュレーションして7-8%を出したかは分かりませんが、この恩恵は燃費7-8%向上にとどまらないでしょう。商用化が楽しみです。