中学受験の雑感・思い出

alt-native2008-09-01

9/1 日経新聞朝刊から
クレディ・スイス証券 市川真一氏が現在の教育指導要領の問題点とその解決策についてインタビューに答えています。記事の概要は以下のとおりです。

  • 現在の学習指導要領は「プロセス管理」中心である

総授業時間数、学年ごとのカリキュラムなど教える側のマニュアルとして整理されている。しかし、どんな成果が得られたかを検証する仕組みがない。責任が曖昧な中央教育審議会では時代の変化に対応できない。

  • 「パフォーマンス管理」型に切り替えるべきである

文科省が責任を持って教育目標を定める。全国・全学年で学力調査を実施して、問題を徹底して洗い出す。文科省が責任を持ってその問題改善に取り組む。

  • プロセス管理の権限を地方に移すべきである

塾がない地方と大都市では状況が違う。授業時間数、教員数などを全国一律に決めるのは戦後教育制度は時代に合わない。
制度の問題点が公教育の信頼度を下げており、それによって私学や塾が隆盛している。
日本経済の発展には公教育の底上げが不可欠であり、低所得でも良質の教育が受けられるようにする予算を削るべきではない。

私やその上の世代が大学受験をしていた10年前にはすでに東大合格者の高所得世帯出身者の比率が高まっていました。それから緩〜やかな景気回復の中で日本の教育は急激に私学重視に傾いていきました。
私は大学4年間、神奈川県の某学習塾で講師をしていましたが、有名校ひしめく東京・千葉・埼玉への受験も可能なので、親御さん方の受験熱も高かったように思います。中学受験専門の学習塾が乱立して熾烈な合格争いを演じていました。
神奈川県の中学学力試験の解禁日2/1ともなると各中学校の校門に講師たちがずらりと並びます。門前で受験生を激励するのです。ナイーブな小学生は極度の緊張やプレッシャーには慣れないので、リラックスさせるために声をかけたりするのです。たぶん子ども達はその光景を見てますます緊張してたと思います。一方講師にとっては、真冬の朝6時半からカイロ片手に棒立ちというのはなかなかいい経験です。余談でした。
私学重視傾向の根底にはやはり父親・母親の公立学校への不信があります。学級崩壊はどこの学校でもありましたが、中学校で教師の方が授業を放棄してしまう(大げさではなく)というような事態も聞かれました。不安になる親御さんの気持ちも察することができます。
しかし、私立中学を受験して中高6年間通学するというのはかなりのお金を必要とします。現在の中学受験は小学4年生から始めないと志望校に合格するのが難しい状況です。塾によっても違いますが、4年生から6年生まで塾に通えばそれだけで通算100万円は最低でも必要です。もし成績不振で家庭教師や個別指導、受講科目を増やせば倍増します。実際にそのくらいかかったであろう子も知っています。そしてそれは一部の恵まれた子どもです。
別に受験が最良の教育というわけではありません。しかし、その教育機会を得られる子と得られない子がいるのは事実です。塾に行かなくても学校でケアが行き届いた教育を受けるようにするのが理想論としての公教育のベストアンサーではないでしょうか。まさしく教育の底上げは喫緊の課題だと思います。
教える側が汚職ばかりでは理想もまだほど遠くてため息が出てしまいますが。