赤坂大歌舞伎みました

alt-native2008-09-15

赤坂ACTシアターのオープニングシリーズとして行われた「赤坂大歌舞伎」を鑑賞してきました。歌舞伎は初めてでしたが、非常に面白かったです。
演目は「狐狸狐狸ばなし」「棒しばり」です。詳細は私が語っても無粋なので割愛しますが、さらに誤解を恐れずに率直に言わせてもらえば「コント」です。もちろんどちらも伝統のある演目ですし、時代設定も江戸時代です。もちろん歌舞伎には泣ける話や暗い演目もあります。たまたまコント仕立ての内容だったのだと思います。しかし、おそらく元の台詞のまま演じられたら何も分からず「コント」と解することはできなかったでしょう。そこに赤坂大歌舞伎の価値があると思います。
キャストは中村扇雀坂東彌十郎中村勘太郎中村七之助、中村段治郎という大物ぞろいです。力のある人ばかりだからでしょう、どのキャラクターも上手かったです。
なかでも中村勘三郎はやはり異彩を放っています。言葉の節々まで演出されていて、所作の全てに意図を感じとることができます。ど素人の私が見てもそこまで感じるほど彼の演技は輝いていました。
感じられるコンセプトは「笑わせること」「楽しんでもらうこと」です。中村勘三郎氏はパンフレットの中で以下のように語っています。

せっかくACTシアターでやるんだったら、まだ一回も歌舞伎を観たことない人に来てもらいたいですし。だからなるべく分かりやすいものにしようと決めました。

彼の宣言どおり、劇は所作、表現など全てが分かりやすいものでした。彼はとっつきずらい歌舞伎を大衆的なものに戻すためにいろいろなことに挑戦していることで有名ですが、私が見てきたものもその「チャレンジ」だったのだと思います。
「狐狸狐狸ばなし」はセットを使った長編でまさしく「コント」でした。落語になってもおかしくなさそうな。でもあれが落語になったら味わいがイマイチかな。
対して「棒しばり」は板の間を敷き、後ろで演奏者がついて壁には松が描いてあるいわゆる「歌舞伎」な舞台で行われました。
前者がダイレクトに笑いを誘ったのに対して、後者は演者の言葉、アクションのみで観客に多少のイマジネーションを要求する点で旧来の歌舞伎に近いものがありました。もちろん言葉は多少平易なものにしてありましたが。しかし、かといって全部現代語にしないところはさすがです。「-してはいかがか」「心得た」というフレーズを違ったイントネーションで何度も復唱するシーンがありますが、これが現代語になったら全然おもしろくないからです。
場所柄もあるでしょうが、チケットもそれなりのお値段でした。もちろん面白かったし、チケット代だけの価値はあったと思いますが、歌舞伎全体として考えると敷居の高さも感じました。