携帯電話業界に思うあれこれ

携帯電話業界をウォッチできていない最近ですがとりあえず書きとめておきます。

政府は旗も振れない

ガラパゴス化」が唱えられて久しいのですが、国はどうも勘違いしている気がします。
総務省で携帯市場評価会議、「官製不況ではなく構造改革中」@ImpressWatch

ノキアサムスンといった企業は、国別の仕様ではなく、メーカーとして1つの仕様で各国に展開している。日本市場は、海外よりも先進的なサービスを提供してきたが、販売数減少は進化のスピードが落ちることに繋がる」と回答した。
これについて評価会議座長を務める東京大学名誉教授の齊藤忠夫氏は「今のはメーカーとして敗北宣言ではないのか。日本メーカーがいたずらに世界一を求めた結果、海外で展開できていないのではないか」と詰問調で述べたが、
長谷川氏は「決して敗北宣言ではない。日本市場と海外市場には違いがある。海外製端末を日本向けに投入されても、受け入れられていない。もちろん国内だけではダメで、当社でも中国や欧州向けビジネスに取り組んでいる。決して海外ではビジネスできないと敗北宣言しているわけではない」と反論した。

このやりとりはよくわかりません。別に敗北宣言してもいい気がします。日本の携帯電話の端末や市場構造が欧州・米国と差異が多く、日本流のサービス展開が難しいのは本当のことです。携帯電話市場が先進的なのは端末だけでなくサービスコンテンツと端末が密接に連携しているからです。
サービスを展開しているのはキャリアで、電波の変調方式、コアネットワークから機種ごとに対応するインターネットサイト、端末の仕様までキャリアがガチガチに決めてきたから「先進性」を確保できた側面は否めません。
いわゆる「海外展開」はメーカーが端末を出荷することですから、前述のアドバンテージが死ぬのは当然です。キャリアはユーザー拡大にひた走っただけで「世界一」を目指したわけではない気がします。

市況も冬に

携帯料金の明細書にみる携帯市場の今後@CNET
ユーザーはARPUに敏感です。少しでも安い料金に抑えたいのに、複雑な販売方式が買い替え需要を抑制しています。これから経済状況の悪化によってキャリアはさらに厳しい競争にさらされることになります。2005年頃からひたすら上り坂、2007年から踊り場だった携帯電話業界はこれから初めての下り坂を体験します。
生き残るために必要なのはやはり端末の商品力な気がします。auコモディティ化で沈んだように、端末ポートフォリオは多様性が重要です。その点、Softbankの秋冬モデルはバリエーション豊かで勢いを感じます。特にNokiaSamsungAppleのような海外メーカーの個性は魅力的です。

Aplixの影

話は変わるような変わらないような。小さい話。
「端末調達力」のすごさ見せつけたソフトバンク冬モデル@NikkeiNet
気になった箇所があります。カシオ計算機製830CAについて石川氏が

メニュー画面の構成をよく見ると、冬商戦向けにソフトバンクモバイルに供給していないあるメーカーに酷似しているようだった。CDMA2000方式をメインとするカシオにとって、W-CDMAを手がけるのは相当に高いハードルであるため、他のメーカーの力も借りたのかもしれない。

とコメントしていますが、変調方式が違うからといってUIアプリケーションまで作り直したと考えるのは早計です。au端末は多くがCDMA2000ライセンスを提供するQUALCOMMチップ上でOS・通信ミドルウェアコンポーネント化されています(=KCP)。メーカーがこれにユーザーアプリケーションを実装します。
今回、ソフトバンクで秋冬モデルを出していないのはNECでしょうか。SoftbankではSymbianOSがメジャーなのでSoftbank向けソフトベンダーのAplixあたりに開発を依頼した可能性はあります。その「メニュー構成」がどうなっているのかを確認しないと何ともいえませんが、Aplixが作ったUIがNECに似てしまったということはありうるとでしょう。
ただ、日本ではUI仕様はアプリベンダーではなくメーカーが決めるのが基本なので(私の勘違い?)「酷似」は勘違いであると判断するのが妥当ではないかというのが私の結論です。
ただ、石川氏と同様に私も推測の域を出ないので偉そうなことは言えないのですが。