NEDO知能化プロジェクトの正念場

知能化プロ、一部RTCをOSSとして公開へ@ロボナブル
日刊工業新聞NEDO次世代ロボット知能化技術開発プロジェクトについて報じています。
RTCとRTSの形でOSSとして公開するとのこと。

基本計画どおり..?

改めて基本計画(PDF)をちょっと見てみます。
これによれば、たしかに「プロジェクト期間中および終了後、成果の外部への提供を積極的に行う」となっています。
しかし、そのすぐ後の項で「知財の帰属は委託先」、つまり成果物は大学や企業、研究機関のものと言っています。
これではNEDOが提供できる権限を持つ「成果物」はどこにあるのでしょう。国プロはよくわかりません。
企業は成果物を公開したがらない(よくてバイナリ)のでOSS提供は大学や研究機関のモジュールということになります。

ROSはライバルではないのは?

日刊工業新聞はWillowGarageのROSがOpenRTM-aistのライバルになるかのような書き方をしていますが、これは違うと思う。
ROSはPR2のようなリッチなセンサーとアクチュエータを持ったロボットを制御するためのドライバ、ユーティリティ、ライブラリ群です。
OpenRTM-aistはCORBAで高速で同期しながら処理できるソフト形態=コンポーネントをとるためのライブラリです。
両者は競合しないでしょうし、ROSは各Linuxディストリにインストールできるので、何らかのLinuxディストリに両方インストールしてRTCを動作させてPR2を制御することは可能なはずです。

使える成果物はあるのでしょうか?

なお、企業がRTCを利用する場合、実装するロボットシステムの安全認証を受けるとなると、動作保証に加え、開発プロセスも問われることになる。機能安全規格IEC 61508はプロセス重視であるため、同規格の認証を受ける場合は要求される。ゆえに、開示されたソースコードを参照しつつ、ソフトウエア開発管理を実践したうえでつくり直すのが現実的な方法になるという。

この指摘は正しい。
大学や研究機関がソフトウェアの仕様から見積や設計という過程を踏んでその成果物を残していなければ、テスト項目が作れません。
テスト項目が作れなければ、ITやSTはできないので品質を計るのも難しくなります。
研究者の方は一人でコーディングしてしまう上に、コードレビューという習慣がないのでソースコードにはコメントがありません。
研究リソースとしてのソースコードはエラー処理系が考慮されていません。正常系が通れば論文は書けるからです。
公開されるであろうソースコードはこういったリスクをはらんでいます。
プロジェクトリーダーの佐藤先生はこういった障害を克服していく必要があります。今年が正念場ですね。