秦郁彦「昭和史の謎を追う」

近所の古本屋に寄ったらあったので即購入。通勤時間だけ歴史に浸っていました。
秦郁彦氏の「昭和財政史-終戦から講和まで-」(東洋経済新報社)は終戦直後のGHQ占領政策を軍事や政治からではなく、外交や経済の面から詳細に分析した名著です。大学の卒論でお世話になった、ってか面白くこればっか読んでました。
いつか他の著書を拝読したいと思っていたのでラッキー。あとがきを引用。

思えば昭和はふしぎな時代であった。
前後六十数年と、もてあますほど長かったその前半、文字どおり戦争に明け暮れた日本は、太平洋戦争の敗北を境に後半を一人の戦死者も出さない平和主義で押し通した。
あえて昭和のキーワードをえらべば「戦争と平和」になるだろうが、その鮮やかな落差と転生を一身で体得した人々も老いを深め、記憶は風化の一途をたどるばかりである。
上下巻八百余ページの校正を進めながら、筆者がふと思い浮かべたのは、
 降る雪や明治は遠くなりにけり
という中村草田男の句であった。
彼がこの句を詠んだのは昭和六年だというから、明治という「偉大な時代」が過ぎてから二十年目に当る。
昭和が終わってからまだ四年にしかならないのに、筆者が中村草田男の感慨にならって「昭和は遠く……」の思いを反芻するのは、時の流れが加速しているのか、渦中の時代さえ遠景として眺めようとする歴史家の本能のせいか、見きわめがつかない。

私も昭和生まれですが、物心ついた頃にはすでに平成でした。
いつのまにか平成も22年が経過。すでに「失われた10年」の総括も見られます。すでに平成も「遠景」になりつつあるのでしょうか。

昭和史の謎を追う 上 (文春文庫)

昭和史の謎を追う 上 (文春文庫)

昭和史の謎を追う 下 (文春文庫)

昭和史の謎を追う 下 (文春文庫)